箪笥(たんす)、長持(ながもち。長方形状のふた付きの箱)、机、戸棚、箱火鉢、針箱、煙草盆などの家具を作る職人。江戸時代の民衆の家具として比較的大がかりなものに箪笥があるが、これが登場するのは17世紀半ば過ぎで、一般に広まるのは17世紀末である。それまでの民衆は、箪笥にしまうほどの衣類も貴重品も持っていなかったし、安価な板が供給されない段階では、民衆を顧客とする引き出しのある箪笥は作れなかったことによる。指物の技術は、江戸時代を通じて長足の進歩を遂げ、鉄砲屋亀斎(てっぽうやきさい)のような伝説的な名人も登場する。商家に残る箱階段、帳箪笥、火事の際に持ち出せる車箪笥、小さな引き出しがたくさんある薬箪笥、海水が入らない船箪笥など、現在でも残されているものも多い。