寺社の梵鐘(ぼんしょう)や鰐口(わにぐち)、水盤、日常品としての鍋・釜などの青銅器や鉄製品を製作する職人。発祥の地は畿内の先進地域で、中世には朝廷の認可を受けて全国展開した河内鋳物師などが有名である。近江国・栗田郡辻村の鋳物師集団は、安土桃山時代(1568~1603)から活動を始め、江戸時代に入ると、加賀・越前・駿河・甲斐などの諸国へ鍋・釜を送って商売した。その後、運送費を節約するため、現地に出店を作って販売するようになり、元禄期(1688~1704)には230軒以上の出店を展開した。18世紀初頭、下級公家の真継家(まつぎけ)は、諸国鋳物師の事をつかさどる家であることを称し、鋳物師の職は認可制であることを主張し、全国の鋳物師の再編を始めた。このため、多くの鋳物師が真継家の支配下に入り、鋳物師職許状を受ける代わりに課役や礼物を負担するようになった。しかし、御用鋳物師の椎名家や家康の朱印状を持つ駿河・遠江の鋳物師らは、真継家支配を受け入れず、幕府は真継家の権利を公認しなかった。こうして真継家支配と独立系の鋳物師集団が併存する状態となった。辻村鋳物師では、23株の者が真継家支配、7株の者が自立していた。
朝廷(ちょうてい)
天皇が政治を行った政府。数々の儀式や祭祀も行った。
公家(くげ)
朝廷に仕える貴族や五位以上の官職にある官人。最高位の家柄は摂家。次いで、清華家(せいがけ)、大臣家(だいじんけ)などと続く。各大臣の下、文官で大納言、中納言、参議、武官で大将、中将、少将などの官職についた。
幕府(ばくふ)
武家の政府で、もともとは近衛大将や征夷大将軍の居所を指したが、鎌倉幕府以来、征夷大将軍に任じられた武家が政治を行う場所やその政府のことをいった。