日本の古典である『万葉集』や『古事記』を研究することによって、日本固有の社会や文化を発見しようとする学問。僧侶の契沖(けいちゅう)や荷田春満(かだのあずままろ)をその発祥とし、万葉集研究の賀茂真淵(かものまぶち)を経て本居宣長(もとおりのりなが)が『古事記伝』などを著して国学を大成させた。宣長は、あるがままを受け入れる素朴な古代人の精神世界に価値を置き、仏教や儒学などの外来思想を排除しようとした。ただし、古典の実証的な研究を基礎に置く研究方法は、荻生徂徠(おぎゅうそらい)による儒教の一派・古文辞学(こぶんじがく)を受け継いでいる。祭司としての天皇を中心に神々を畏(おそ)れ敬うことを説く宣長の思想は、平田篤胤(ひらたあつたね)にいたって神道の教義化がなされ、復古神道として神職だけでなく下級武士や豪農層の支持を集め、幕末の尊皇攘夷(そんのうじょうい)思想に大きな影響を与えた。
儒学(じゅがく)
儒教、すなわち孔子の思想に基づく信仰や教えの体系。
尊皇攘夷(そんのうじょうい)
天皇を尊び、その権威を絶対化しつつ、一方で外国勢力の排除を主張することによって幕府を批判する思想。