諜報活動や謀略活動を行うために発展した術技。忍術の起源は、鈴鹿山系に生まれた山岳ゲリラ戦法であるから、夜討ち・放火・潜入などが発達していた。夜間活動することが多いため、方角を知るための星座の研究、猫の目で時刻を測る方法など経験科学的な方法が教えられた。また、内陸交通の動脈である河川で移動するための忍び船なども工夫され、堀の水中に潜む方法、高い塀を乗り越える方法なども編み出された。さらに、爆薬の使い方や万能薬、携帯食料なども工夫された。これらは科学的な思考に基づくものであったから、爆発とともに姿を消したり、天井に張り付いたりというあり得ない忍術などは一顧だにされなかった。しかし、歌舞伎の『天竺徳兵衛韓噺(てんじくとくべえいこくばなし)』などの忍術を取り入れた演目が人気を集め、舞台の上で変幻自在の忍術が演出され、忍者を自称する奇術師も登場する。こうして忍術が誤解されていき、講談に至ってさらに荒唐無稽な忍術が横行することになる。
忍者(にんじゃ)
諜報活動や謀略活動を行うために極めた忍術を使う者で、忍び(しのび)などともいう。伊賀流、甲賀流という流派に見られるように、鈴鹿山系に生まれた山岳奇襲部隊がルーツ。