一般には女忍者の符牒(ふちょう)として理解されているが、実は忍者が忌むべき「女」という言葉を使わないために作られた符牒である。忍者は、酒・色・欲を厳禁し、忍の基本は正心であるとした。すなわち、忍術は、主君のため、天下のためにのみ行うことが許されたものだった。したがって、忍者には基本的に女性はおらず、女色も厳禁すべきものだった。ところが、延宝4年(1676)に著された忍術の古典的秘書である『万川集海(ばんせんしゅうかい。国立公文書館内閣文庫所蔵)』巻八の陽忍の篇(ようにんのへん)に、「くノ一」の術という秘伝が書かれている。これは、「三字を一字にしたるものを忍びに入れるをいうなり」としており、女という言葉を避けながら、女を忍びに利用する手段を解説したものである。具体的には、女を奥女中などに仕立て、相手方の奥深くに潜入させ、情報収集にあたらせることを指す。『万川集海』全22巻中には、数百の忍びの技法が紹介されているが、女を使う術はこれだけだという。
忍者(にんじゃ)
諜報活動や謀略活動を行うために極めた忍術を使う者で、忍び(しのび)などともいう。伊賀流、甲賀流という流派に見られるように、鈴鹿山系に生まれた山岳奇襲部隊がルーツ。
忍術(にんじゅつ)
諜報活動や謀略活動を行うために発展した術技。忍術の起源は、鈴鹿山系に生まれた山岳ゲリラ戦法であり、夜討ち・放火・潜入などが発達していた一方、経験科学的な各種の方法が確立されていた。