町の境に置かれた木戸を守る番人。江戸は町ごとに木戸が設けられていた。町と町の間に横町の通りがあれば、次の町に入る木戸がある。当然、横町の入り口にも木戸がある。木戸は町の治安維持に大きな役割を果たしており、その設置と維持の経費は町が負担した。木戸には町の共同施設である自身番屋があり、町役人などが詰めた。木戸脇には水溜、手桶、梯子(はしご)などの消防用具が置いてあった。木戸番は、自身番屋の雑用をも務めた。木戸は夜閉まるので、木戸が閉まった後にその町を通行する者は、木戸番が付き添って次の町まで送った。これを町送りという。また、火の用心を触れ歩くのも、木戸番の仕事であった。木戸番は、自身番屋とは別に小屋を設けて妻子と同居し、小間物などを置いて売っていた。少ない給料を補うため、許可されていたものだろう。木戸番の給料は町が払うので、節約して、社会的に立場の弱い老人や身体障害者などを低い賃金で雇うことも多かった。こうしたことから、木戸番は多少軽蔑(けいべつ)の意を込めて番太郎、番太とも呼ばれた。