町屋敷を管理する者を大家、あるいは家主(やぬし)や家守(やもり)ともいい、町屋敷に建設された長屋に賃借して住む者を店借という。江戸では、同一職種の商人や職人が同じ町に町屋敷を与えられ、幕府や武士たちの御用を務め、一種の営業税である国役(くにやく)や公役(くやく)を負担した。厳密にいえば、町屋敷を所有する家持(いえもち)だけが町人であり、町の自治を担った。町屋敷は本来永代所有のものであったが、次第に売買や質入れが行われるようになり、所有権の移動があった。元禄期(1688~1704)には、近江や伊勢などの商人が江戸に出店を設けるなど積極的に進出したので、家持の交代もまれではなかった。江戸が拡大するにつれて諸国から江戸に流入する者が増加し、家持の中には町屋敷に長屋を建てて貸家経営に乗り出した者もいた。貸家を経営する家持が別の屋敷や町にいる場合に、大家を置いて管理させ、家賃を徴収した。江戸時代後期、江戸周辺の農村の富裕な農民の中には、江戸の町屋敷を取得し、貸家経営する者もあった。大奥女中の中でも、老女(御年寄)や表使(おもてつかい)などの役に就いた者は、給与のほかに町屋敷が与えられ、家賃収入を得た。こうした場合も大家を置いて管理し、家賃を徴収させた。
幕府(ばくふ)
武家の政府で、もともとは近衛大将や征夷大将軍の居所を指したが、鎌倉幕府以来、征夷大将軍に任じられた武家が政治を行う場所やその政府のことをいった。
武士(ぶし)
平安時代(794〜12世紀末)後期に生まれた、戦いを任務とする者。鎌倉時代以降、武士が政権を握ったため、支配階級として政治をも担当することになった。
大奥女中(おおおくじょちゅう)
大奥に勤務する女中で、御年寄をはじめとして多くの役職があった。
老女(ろうじょ)
大奥女中を統轄(とうかつ)する責任者。御年寄の別称。
表使(おもてつかい)
将軍家や大名家、あるいは旗本に仕えた奥女中の中の「御目見以上」の役職に設けられた役職の一つ。