軍勢を動かす方法を考察する学問をいう。江戸時代、戦いがなくなってから体系化されたものを兵学といい、それ以前のものを兵法(ひょうほう)といって区別するのが一般的である。戦国時代の戦いの中で、甲州流、越後流、長沼流、北条流などの兵法諸流派が成立していた。これらは、江戸時代に入り、『甲陽軍鑑(こうようぐんかん)』(小幡景憲著、甲州流)、『士鑑用法(しかんようほう)』(北条氏長著、北条流)などの書物となり、写本で伝授された。また、中国・春秋時代の兵学者・孫武(そんぶ)の著書とされる『孫子』などの本も出されるようになり、研究された。山鹿素行(やまがそこう)は、『武教要録(ぶきょうようろく)』『武教全書』などを著し、兵学を体系化した。儒学の一派である古文辞学の荻生徂徠(おぎゅうそらい)は、『録(けんろく)』を著して集団戦法と日常的演習の必要性を説いた。その後も多くの論者によって兵学が説かれるが、その基礎となったのは、『孫子』であった。
兵法(ひょうほう)
軍勢を動かす方法を考察する学問、あるいは剣を中心とした武術。
儒学(じゅがく)
儒教、すなわち孔子の思想に基づく信仰や教えの体系。