江戸時代の郵便を担った者。飛脚といえば、状箱を担いで走っていくイメージがあるが、複数の馬に書状や荷物を積み、宰領(さいりょう。取りまとめ役)の者が馬に乗って、ゆっくりと運ぶものも飛脚である。幕府が各地の城代や遠国奉行などへ連絡する場合は、継飛脚(つぎびきゃく)によって行った。継飛脚は、宿の業務を果たす問屋場で人を替えてリレーする飛脚であり、江戸から大坂への所用日数は4日ほどで、18世紀中ごろに3日ほどに短縮された。三度飛脚は、月3回、大坂・二条・駿府(すんぷ)の3城を警護する番衆(大番の旗本)へ定期的に送る飛脚である。普通便は、江戸~上方(かみがた 京都~大坂地方)間で6日とされた。大名飛脚は、大名が江戸藩邸と大坂蔵屋敷、国元(領地、領国)との連絡にあたらせるために設けた飛脚である。家老の御用状のほか、藩士の私信も扱った。途中で継所(つぎしょ)を設けて、交代させて送る藩もある。町飛脚は民間が設けた飛脚で、各地にあったが、江戸の定飛脚(じょうびきゃく)、京都の順番飛脚、大坂の三度飛脚(公用の三度飛脚とは異なる)が有名である。町飛脚は、手紙や荷物の輸送のほか、金子(きんす)や為替の輸送も行った。
幕府(ばくふ)
武家の政府で、もともとは近衛大将や征夷大将軍の居所を指したが、鎌倉幕府以来、征夷大将軍に任じられた武家が政治を行う場所やその政府のことをいった。
遠国奉行(おんごくぶぎょう)
幕府が直轄する地方要地に在勤する諸奉行の一般的な呼称。長崎奉行、京都町奉行、大坂町奉行、佐渡奉行など。
問屋場(といやば)
宿場で人馬の継ぎ立てを行う場所で、現在でいえば駅。本来は公用人馬の継ぎ立てを行う場所だが、商人の荷物も取り扱い、御用旅館の手配なども行った。
大名(だいみょう)
将軍の直臣のうち、1万石以上の知行(ちぎょう。幕府や藩が家臣に与える、領地から年貢などを徴収する権利)を与えられた武士。
家老(かろう)
藩士の最高位。現代でいえば、代表権をもつ藩政の責任者で、「重役」ともいわれる。大藩では家格の高い家が世襲した。
藩(はん)
将軍から1万石以上の石高(こくだか)を与えられた大名が治める、それぞれの地域に設けられた政治機構。