武士の給与のあり方で、与えられた領地の百姓から年貢をとる方式をいう。もともと武士は「一所懸命」の語に示されるように、領地を命がけで守る在地領主だった。江戸時代になると、実際には領地を持たない武士が増加し、在地との結び付きは希薄となったが、九州や東北の外様大藩では、地方知行制が強固に残存した。中藩の上級家臣も領地を与えられる者が多い。また、幕府の直臣である旗本では、寛永(1624~44)、元禄(1688~1704)に、禄米ではなく知行地として与える「地方直し(じかたなおし)」が行われ、加増されておおむね300石以上になる者には地方知行が認められた。江戸に住む旗本は、領地に陣屋を置いて年貢の徴収にあたったが、実務は名主などの村役人が行った。
武士(ぶし)
平安時代(794〜12世紀末)後期に生まれた、戦いを任務とする者。鎌倉時代以降、武士が政権を握ったため、支配階級として政治をも担当することになった。
年貢(ねんぐ)
農民が領主に上納する負担で、近代の税金にあたる。土地の潜在的な収穫量である石高(こくだか)に対してかかり、物成(ものなり)、取箇(とりか)ともいう。
外様大藩(とざまだいはん)
関が原の合戦以後に徳川家に仕えた大名家のうちで大きな藩。
幕府(ばくふ)
武家の政府で、もともとは近衛大将や征夷大将軍の居所を指したが、鎌倉幕府以来、征夷大将軍に任じられた武家が政治を行う場所やその政府のことをいった。
旗本(はたもと)
1万石未満の将軍の直臣で、御目見得以上(将軍に拝謁できる)の者をいい、約5000人いた。
知行(ちぎょう)
幕府や藩が家臣に与える、領地から年貢などを徴収する制度。