農民が領主に上納する負担。近代の税金にあたる。土地の潜在的な収穫量である石高(こくだか)に対してかかり、物成(ものなり)や取箇(とりか)ともいう。農民の負担には本年貢(本途物成[ほんとものなり])のほか、山野河海の利用に対してかかる小物成(こものなり)、石高に応じてかかる付加税である高掛物(たかがかりもの)、労働力提供である国役(くにやく)や夫役(ぶやく)などがあった。これらは次第に金納とされた。年貢の徴収は、その年の作柄によって賦課する検見取法(けみとりほう)と、作柄にかかわらず一定の率とする定免法(じょうめんほう)があり、幕領では8代将軍・吉宗のときに定免法が採用された。年貢率は、幕領では五公五民、大名や旗本の領地である私領では六公四民が一般的だとされる。たとえば、六公四民の場合、持高(もちだか)、すなわち石高換算した農地と屋敷地の総計の60%を年貢として上納し、残りの40%を農民のものとする。ただし、農地の一部が荒地になったり予想以上の凶作の場合は、一部が控除された。また、裏作の麦には年貢がかからなかった。18世紀前後の幕領では、平均して年貢の量は収穫の3割弱だったとされる。百姓の持高は検地によって確定されるが、江戸時代中期以降、検地はほとんど行われなかったので、生産量の増大や、綿作や都市近郊の蔬菜(そさい。野菜や作物になる植物)作りなどの商品作物の生産によって、年貢は次第に軽いものとなった。貨幣収入が多い地域では、年貢の一部が金納とされることも多い。
検見取法(けみとりほう)
農地や生産力、その年の作柄、収穫量によって年貢を決定し、徴収する方法。
定免法(じょうめんほう)
過去数年間の収穫をもとに年貢の率を定める方法。
将軍(しょうぐん)
幕府の主権者で、形式的には朝廷から任命される。正確には征夷大将軍で、大臣を兼ね、正二位に叙された。
大名(だいみょう)
将軍の直臣のうち、1万石以上の知行(ちぎょう。幕府や藩が家臣に与える、領地から年貢などを徴収する権利)を与えられた武士。
旗本(はたもと)
1万石未満の将軍の直臣で、御目見得以上(将軍に拝謁できる)の者をいい、約5000人いた。