江戸時代の病は、疫病(しっぺい)、疝気(せんき)、癪(しゃく)、食傷(しょくしょう)、腫病(しゅびょう)の五つに分類されていた。疫病は、伝染性の熱病をいい、麻疹(はしか)、痘瘡(とうそう。天然痘ともいう)、コレラ(コロリともいう)などが流行した。疝気は胸の痛み、癪は腹部の痛みをいい、食傷は食あたりなど、腫病は皮膚のでき物や内臓が肥大する病をいった。このほか、血の道と呼ばれる婦人科の病気や、外科が処方するけがなどがある。現代医学と違い、病気は症状で分類され、それぞれに効くとされる漢方薬があった。漢方薬を処方するのは医者であるが、庶民が医者にかかるのは困難だったので、江戸時代中期には町中に生薬屋(きぐすりや)が増え、売薬が盛んになった。また、「富山の薬売り」こと富山売薬などの行商も普及した。