主に男子の成人式をいう。「元」は首のこと、「服」は冠のことで、成人に達した男子が、髪形や服装を変え、社会に加わる儀式である。元服のときに烏帽子(えぼし)をかぶせる加冠役(かかんやく)を烏帽子親(えぼしおや)といい、生涯保護者としてふるまった。江戸時代の武家では、前髪を落として月代(さかやき。額から頭頂部にかけて剃りあげた部分)を剃り、幼名から大人の名前に変わる。農村でも元服があり、若者組に入り、村の祭りや会合に参加できる資格をもった。江戸の大店でも、元服すると丁稚(でっち。年季奉公する少年)から手代(てだい。丁稚と番頭の間の立場となる使用人)となり、給金を与えられ、商いを任されるようになる。農村や商家では、実際に働きを要求されるので、元服は17歳前後だが、武家では15歳前後が一般的であり、跡取りの資格を確立させるため、それよりも早めに元服させることも多かった。女子の場合は、初潮の開始をもって成人とされることが多く、平安時代(794~12世紀末)の公家では初めて裳を着けるため、着裳(ちゃくも)といわれ、着裳後は眉を剃り、お歯黒を付けた。
公家(くげ)
朝廷に仕える貴族や五位以上の官職にある官人。最高位の家柄は摂家。次いで、清華家(せいがけ)、大臣家(だいじんけ)などと続く。各大臣の下、文官で大納言、中納言、参議、武官で大将、中将、少将などの官職についた。
お歯黒(おはぐろ)
江戸時代、既婚の女性が歯に施した黒い化粧。お歯黒は、酢・酒・米のとぎ汁などに釘などを入れて作ったお歯黒水と、タンニンが主成分の五倍子粉(ごふしのこ)を、筆で歯に交互に塗りつけた。