庶民が入れられるのは、牢屋敷にいくつかある牢の中で大牢と呼ばれる30畳ぐらいの広さの畳敷き牢である。大牢は、東牢と西牢があり、東牢には有宿者、西牢には無宿者が入れられた。牢は自治が認められていて、それを束ねるのが牢名主である。牢での扱いは金次第といわれ、着物などに縫い込んで密かに金子(きんす)を持ちこめば優遇される。この金子を「ツル」という。調べる下男も、牢の同心の見ているときに見つけると没収されるので、気付いても黙認し、牢名主からなにがしかを受け取る。入牢者がいい着物を着ていると、牢名主に奪われ、代わりに粗末な着物を渡される。牢には布団がないが、布団を差し入れることは認められていたので、布団を敷いて寝る。差し入れのない者は、着物を重ねて寝るしかないが、重病などにかかると、布団が貸し与えられる。
牢屋敷(ろうやしき)
江戸時代の拘置所や留置場というべき施設で、刑事事件の未決囚を収監する場所。町奉行所直属の牢屋敷は小伝馬町に置かれた。
無宿(むしゅく)
決まった住居や生業をもたず、人別帳への登録もなされていない者。
同心(どうしん)
町奉行所にて、さまざまな掛(かかり)に分かれた与力のもとに配属される役人。町奉行所には100〜120人ほどが勤務した。