主に、盗犯に施される罰。腕に幅三分(約9mm)ほど二筋に墨を入れる。入墨刑は、古くから行われたが、成文化されたのは8代将軍・吉宗の治世である享保5年(1720)2月17日で、耳や鼻をそぐ刑罰を科せられた者よりも罪の軽い者に行われた。『公事方御定書(くじかたおさだめがき)』では指切や耳鼻そぎの罰は廃止され、以後は敲き(たたき)か入墨となった。幕府の遠国奉行では、すべての罪人の腕に入墨を施し、藩においては額に彫ることもあった。入墨がどこに彫られているか、どのような形であるかで、どこで罪を犯したかがわかるようになっていた。模様などを彫る彩色のものは刺青(しせい)といい、入墨とはいわない。
将軍(しょうぐん)
幕府の主権者で、形式的には朝廷から任命される。正確には征夷大将軍で、大臣を兼ね、正二位に叙された。
『公事方御定書(くじかたおさだめがき)』
幕府編纂による法令集。上下巻で構成され、上巻は庶民へ決まり事を伝達するお触書(おふれがき)などをまとめ、下巻は過去の判例をもとに判決を行う際に参考とするべき「百箇条」をまとめたもの。
幕府(ばくふ)
武家の政府で、もともとは近衛大将や征夷大将軍の居所を指したが、鎌倉幕府以来、征夷大将軍に任じられた武家が政治を行う場所やその政府のことをいった。
遠国奉行(おんごくぶぎょう)
幕府が直轄する地方要地に在勤する諸奉行の一般的な呼称。長崎奉行、京都町奉行、大坂町奉行、佐渡奉行など。
藩(はん)
将軍から1万石以上の石高(こくだか)を与えられた大名が治める、それぞれの地域に設けられた政治機構。