腰に提げて携行する薬入れ。薬籠(やくろう)ともいう。蓋(ふた)と本体(3重または5重のものが多い)の穴に紐(ひも)を通し、紐の先端には根付けを付けて滑り止めとした。安土桃山時代(1568~1603)から用いられ、元禄(1688~1704)のころには武士のファッションとして定着した。材質は漆塗り、陶製のもの、金属製のものなど多様だが、多くは華麗な蒔絵(まきえ)が施された。テレビドラマ『水戸黄門』で、水戸藩隠居・徳川光圀を前に家臣の助さん・格さんが葵の御紋入りの印籠を出す場面でおなじみだが、初期のころの『水戸黄門』では、印籠を用いていない。実際、もしそういう印籠を持つ者がいたとしても、それは拝領品だと理解され、黄門様本人とは誰も思わなかったであろう。なお、「黄門」とは、中納言の唐名(とうみょう)のこと。
武士(ぶし)
平安時代(794〜12世紀末)後期に生まれた、戦いを任務とする者。鎌倉時代以降、武士が政権を握ったため、支配階級として政治をも担当することになった。