[一言で解説]
刑事裁判では、検察官と被告人を当事者という。検察官から見た被告人、または被告人から見た検察官を、「反対当事者」という。
[詳しく解説]
刑事裁判は、検察官が裁判所に対して、被告人に有罪判決を出してくれと請求し、これに対して被告人が争う形で進みます。ですから当事者とは、検察官と被告人を指します。請求を受けた裁判所(裁判官・裁判員)は、中立の審判者であって、有罪かどうかを争っている本人ではないので、当事者ではありません。また、被告人を助ける立場にある弁護人も、当事者「側」ではありますが、当事者ではありません。ところで、刑事裁判では、当事者が証拠を示しながら事実を主張し、反対当事者がそれに反論しながら手続きが進みます。裁判所は中立の立場からその様子を見聞きするというスタンスです。このように、裁判の主導権が、裁判所ではなく当事者にあるという考え方を当事者主義といいます。戦前は裁判所が主導権をもっていたため、被告人を取調べの対象としてネチネチと調べつくし、自白を強要するなど、人権を侵害しがちでした。こうした歴史に鑑み、裁判所は中立的なアンパイアの立場から、当事者のどちらの言い分が正しいかを判断するだけにとどまることにしたのです。