寒くなってくると、かぜをひく人が増えてきますね。昔から「かぜは万病のもと」などといいますが、その語源は、実は漢方の起源である中医学からきたといわれています。中医学における「風」の「邪」、すなわち「風邪(ふうじゃ)」によって引き起こされる、発熱や悪寒などの症状を伴う病気が、日本に伝わって「かぜ」と呼ばれるようになったという説です。
「邪」とは、漢方では病気になる原因のことを指します。「風」のほか、「寒」「暑」「湿」「燥」「熱」といった天候の影響も、「邪」の一つととらえ、老化を早める危険因子とされています。
かぜの対処は、(1)ひき初めの時、(2)本格的にかかった時、(3)こじらせた時という3段階に分けて考えます。
ひき初めの時の典型的な症状には、頭痛、のどの痛み、ゾクゾクした感じ、寒気があげられます。この段階では、かぜが体の奥に入り込まないようにすることが肝心です。厚着しただけでは、温まった感じがしてこないことも多いので、体の内側から温めるようにします。すり下ろした生姜(しょうが)の汁にはちみつ、片栗粉などを加えた生姜湯を飲むと、よく温まります。
口中が粘って食べ物の味がわからなくなる、せきが出る、夕方に熱が出ても朝方には下がる、といった症状は、かぜが少し体の奥に入った時の症状です。胃腸が弱ってきているので、うどんなど、胃腸にやさしい温かい食べ物をとりましょう。
さらに症状が悪化し、かぜをこじらせてしまうと、のどの乾きがひどく、便秘がちになり、意識も朦朧(もうろう)としてきます。この段階では、上気道などに起きている炎症を鎮めなくてはいけません。そこで、わきの下などにある大きな血管を冷やします。
こうした対処法よりも、手っ取り早い手段として、薬局で漢方処方をうたったかぜ薬を購入する人もいることでしょう。その際には、いくつか注意点があります。
例えば、かぜ薬として広く知られている葛根湯(かっこんとう)。この漢方薬は、「胃腸が丈夫な人や、若者のかぜの初期」に用いられる代表的な処方です。したがって胃腸が弱い人、体力のない高齢者が、長引いているかぜを治すために服用すると、かえって食欲低下や胃もたれなどを引き起こす場合があります。
漢方では、体質のことを「証(しょう)」といいますが、このように証に合わない漢方薬を飲むと、症状がよくならないばかりか、思わぬ副作用に見舞われてしまいます。漢方薬を服用する際には、たとえかぜ薬であっても、薬剤師に相談するか、漢方に詳しい医師の診断を受けることをおすすめします。
「風の邪」に冒されないための基本的な養生は、免疫力を高めることです。「免疫」とは「疫(病気)を免れる」、つまり病気にならないようにするという意味です。日ごろから、食事は腹8分目、夜更かしをしない、といった生活習慣に気をつけましょう。