日本の花粉症患者数は、約2000万人といわれています。実に日本人の6人に1人が、花粉症に悩まされているという計算です。
花粉症は、免疫が関係するアレルギー疾患の一つです。アレルギーとは、特定の原因物質アレルゲンに対して、体に備わっている免疫系が、それらを排除するため、必要以上の暴走を起こしてしまうこと。免疫反応の異常が、関係しているといわれています。
花粉症の場合で説明すると、スギやヒノキなどの花粉をアレルゲンとする免疫反応によって、鼻や目の粘膜組織に炎症が生じ、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみが発現します。そのほか、のどの違和感、激しいせき、頭がボーっとする、体がだるいといった全身症状が起こることもあります。
患者さんの中には、鼻水や鼻づまりといった症状が全くないため、「花粉症ではない」と思っていたものの、花粉の飛びかう季節だけ皮膚のかゆみが起こるので、診察したところ、花粉が原因だったという人もいました。
また、油断ならないのが、「今まで大丈夫だったから」という人でも、花粉症にかかってしまうケースがあることです。アレルギー疾患は、因子の蓄積によるところが大きいので、アレルゲンとなる物質(花粉)を長年取り込んだり、疲労など別の環境因子が重なることで、ある日突然、発症する場合があります。
誰にでも、いつでも発症しうる花粉症ですが、予防や対策でもっとも基本なのは、免疫力を高めて免疫系を暴走させないこと。まずは、日頃の食生活を正して偏食などを避け、寝不足、ストレスによる生活リズムの狂いをなくしましょう。
そのうえで、発症因子を体内に取り込まないようにします。具体的には、(1)外出時にマスクやメガネで鼻や目を花粉から守る、(2)家に入る前に服に付着した花粉をはたいて落とす、(3)鼻や目をこまめに洗う、といったことが挙げられます。
以上2つの対策を怠らなければ、相乗効果として花粉症を予防できるようになります。
万一、罹患(りかん)して医療機関にかかると、点眼や点鼻薬のほか、内服薬が処方されます。西洋薬の場合は、免疫反応を抑制したり、炎症ができるのを阻止する抗アレルギー薬が一般的で、眠気などの副作用があります。最近では副作用を抑えた薬もありますが、効果には個人差があります。
漢方薬の場合は、鼻水の症状が強い際に処方する「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」が代表的です。眠気も起きず、かえって頭がすっきりするといった効果が期待できます。