顔がほてる、頭がかっかと熱くなる、クラッとする…春の不調の典型に、このようなのぼせ症状があります。春になると、陽気(ようき)と呼ばれる、やる気や元気をもたらすエネルギーが体内で高まってきます。しかし、体のどこかのバランスが崩れていると、陽気の流れがスムーズにいかず、体の下から上に向かって逆上し、上半身に滞ってしまう場合があるのです。
この状態を、漢方では「気逆(きぎゃく)」といい、文字通り逆上せ(のぼせ)を招きます。しかも、入浴中などに起こるのぼせは、頭や顔を冷やせばたいてい楽になりますが、気逆によるのぼせは、「冷えのぼせ」といって、上半身がほてっても下半身は冷えている、といったケースが多く見られます。そのため、頭や顔を冷やしながら、同時に足のほうを温めてあげないと、不調が効果的に解消できません。
気逆に対して有効なのは、香りの強い食べ物です。エスニック料理によく使われるコリアンダー(香菜)、みつば、春菊、セリ、青じそ、にらなどの香味野菜、ゆず、オレンジなどの柑橘類、和がらし、洋がらし、コショウ、シナモンなどの香辛料、ミントやジャスミンなどのハーブもいいでしょう。これらは、気の流れをスムーズにしてくれます。香りは好みの差が大きいので、自分で「気持ちいい」と感じるものを選ぶようにしてください。
ほかに効果のある食材としては、ニシン、ニジマス、大麦、ソバ、アワ、かぼちゃの種などがあげられます。ドライフルーツにした甘酸っぱいサンザシの実を、ヨーグルトと一緒に食べるのもおすすめといわれています。
気逆の状態が続くと、のぼせのほか、頭痛、動悸(どうき)、腹痛、せきに見舞われるケースがあります。これらは何の前ぶれもなく、突然、症状が出るのが特徴です。また、焦燥感に襲われたり、神経がぴりぴりして物ごとに驚きやすくなる、などの精神的な症状もあらわれやすいです。そこから消化器系の病気、自律神経失調症、うつ病、過食症、パニック障害などを引き起こす場合もあります。
のぼせがサインの場合もあるので、症状がひどくならないうちに、また、環境の変化に負けない体づくりを心がける意味でも、規則正しい生活を意識しましょう。