夏休みをとっている人も多いと思います。とくに7月下旬~8月上旬は、連日のように猛暑日や熱帯夜が続いて、体に疲労がたまってくるころ。帰省や行楽などで羽をのばしたいところですが、ちょっと待って。日頃から忙しく働いていたり、40歳以降の人は、夏バテならぬ「夏休みバテ」にも注意しなければいけません。
夏休みバテなんて、初めて耳にする人がほとんどでしょう。それもそのはず、「夏休みをとったら体に不調を生じた」という患者さんが、毎年、この時期に増えることから私なりに造語しました。
たとえば休んだ後に休む前より疲れを感じる、やる気が出ない、などの症状がある場合、「休む」という行為が体の負担になって起きた夏休みバテかもしれません。
先日も、早々に夏休みをとった患者さんが、「3日間の休みを利用して、1泊2日の温泉旅行に出かけ、3日目は自宅の掃除などをして過ごしたところ、休み明けになって体がだるく、疲れもひどく、復調するまでに1週間かかった」という話をしていました。
夏休みによって心はリフレッシュできても、体がついてこないのでは、哀しい気持ちになってしまいますね。
「休む」という行為は、日常生活では変則にあたるものです。漢方では「変」(へん)といい、心身に与えるストレスの一種と考えます。変に対して、心身は調整のために気(き=エネルギー)を使わざるを得ません。
普段、仕事や家事などをしている時は、自律神経のうちの交感神経が優位に働いて興奮状態にありますが、作業を終えて家に帰ってきたり、休みに入ると徐々に副交感神経が優位になり、頭や体がリラックスします。そうして休みが明けると、副交感神経から交感神経へ半ば強制的にスイッチを切り替えるわけですが、日頃あまりに忙しい人は、その切り替えがスムーズにいかず、不調を感じることになります。
同じことが加齢によっても起こります。
漢方では、男性は8年ごと、女性は7年ごとに心身の節目が訪れると考えます。たとえば男性ならば16歳で思春期を迎え、24歳で成長著しく、32歳で成熟がピークに達し、40歳で老化が始まる…といった具合です。女性ならば14歳、21歳、28歳、35歳に節目が訪れます。そして男性の32歳、女性の28歳が成熟のピークであり、それ以降は変への対応に時間がかかるようになるのです。
そこで、こうした夏休みバテを防ぐには、休みという非日常生活から日常生活へ移行させるための期間を、あらかじめ用意することです。具体的には、静養にあてた日数と同じ程度の時間を副交感神経から交感神経への移行期間としてとり、普段の生活状態に近づけていきます。
休み前の忙しさの度合い、自身の年齢も考慮して移行期間を決めると効果的です。羽をのばしきった翌日から全開バリバリ…ということがないよう、きちんとスケジュールを立てましょう。