新しい職場や部署、クラスなどに編入し、知らない人と対面することで、手のひらや足の裏に汗をかく、手のひらがべたつく、下痢や便秘を繰り返す(過敏性腸症候群)といった経験がある人は緊張しやすいタイプといえます。これらの症状は、多くは遺伝的な体質によるものですが、不摂生な生活習慣から生じることもあります。
私たちが感じる緊張状態とは、自律神経の一つである交感神経が、優位に働き続けることで起こります。自律神経は意思に関係なく、呼吸、心拍、循環、消化などの機能を制御するための神経で、交感神経と副交感神経からなっています。交感神経は日中の活動的な時に働き、心拍を速めたり、血圧を上げたりするほか、興奮、緊張、怒りなどの精神的刺激に対しても働きます。副交感神経は反対に、そうした状態を解きほぐす神経です。外部から何らかのストレスがかかれば、誰でも緊張しますが、過度に緊張してしまう人は自律神経のバランスが乱れ、交感神経から副交感神経への切り替えが、スムーズに行われにくくなっているかもしれません。
新年度が始まる春は、とくに緊張を強いられる場面が多いため、このような人は体調を崩してしまうことがあります。すると、気(き=エネルギー)、血(けつ=血液)、水(すい=胃液や唾液、リンパ液、汗など)のめぐりも悪くなっていきます。
気(き)のめぐりが悪い気うつの人は、就寝のため布団に入ってもあれこれ考えてしまい、頭が冴えて眠れない、というのが典型的なパターンです。血(けつ)のめぐりが悪いお血(おけつ)の人は、気候が温かくなってきたのに手先が冷えたり、肩がひどくこったりします。女性の場合は月経痛や、月経前の肌荒れがひどいといった症状もあります。水(すい)のめぐりが悪い水毒(すいどく)の人は、足がむくんだり、下痢しやすいといった不調をおぼえます。
日ごろから緊張しやすく、とくに春になって上記のような症状が出る人は、自律神経を調えるための呼吸法を行うといいでしょう。自律神経は、呼吸を意識的に速めたり遅らせたりすることで刺激されます。そうして、結果的に交感神経と副交感神経に働きかけができれば、バランスの乱れを戻すことも可能となるのです。
交感神経が緊張すると、呼吸は浅く荒くなります。一方、副交感神経が優位なときの呼吸はその逆で、ゆったりと穏やかです。そこで、交感神経の緊張を解くには、意識的に副交感神経に働きかけるようなゆっくりと深い呼吸をします。
下腹部を意識して鼻から息をいっぱいまで吸い込み、約5秒間息を止め、口からゆっくりと10秒ぐらいかけて吐き出します。これを何回か繰り返してみてください。