梅雨の時期は、なぜか体がだるく感じます。それは、体内の水(すい=リンパ液や汗など血液以外の体液)のめぐりが悪くなることで、漢方でいう水毒(すいどく)の状態に陥って、体が冷えやすくなってしまうのが原因です。
体が冷えると、筋肉や節々に力が入らず、体全体が重く感じたり、スムーズに動かしにくく思えるようになります。こうした症状を放っておくと、気分も沈みがちになり、精神状態にまで悪影響を与えかねません。うつにもつながりやすいので、要注意です。
「冷え」というと、女性に限った不調のように思われがちですが、男性だって例外ではありません。ある40歳代の男性患者さんが、「梅雨の時期になったら、体がだるく、やる気も起こらなくなった」と訴えて、来院したことがあります。のどが頻繁に渇くため、冷たい飲料水を1日に何本も飲んでいたそうです。また、入浴は湯に浸からず、朝、シャワーを短時間浴びるだけでした。
問診や診察をした結果、冷えが原因で水毒の状態になり、体がだるく、それが悪化して気分も落ち込んでいることがわかりました。それに伴い血行も悪くなっていたので、水(すい)のめぐりを改善する漢方薬のほか、体を温めて、血液のめぐりをよくする漢方薬も処方しました。そのうえで、日々の生活において、冷たい飲み物だけでなく、温かい飲食物を意識的に摂取し、また、入浴時はおっくうでも湯船に浸かるよう指導したのです。
その患者さんは「自分は男だから」という理由で、原因が冷えだとは思っていなかったようで、とても驚いた様子でした。しかし指示通りに薬を飲み、生活習慣を改善したところ、数週間で体調が快方に向かいました。
水毒の状態にある時、手先足先など体の末端の血行が悪いと、水(すい)のめぐりが阻害され、ますます冷えを助長します。
そのような場合、改善には手足のほか、太い血管が集まる首まわりを温めると、全身の血行がよくなって効果的です。さらにこの時期は、冬と違って湿度や気温が高く汗もかきやすいので、通気性のよい靴下や肌着を着用するといいでしょう。水(すい)を体内にためず、常に水はけをよくしておくことが大切です。