これまで夏バテの予防策について、何度となく触れてきましたが、今回は、いよいよ夏バテになってしまった場合の対処法をご紹介したいと思います。
そもそも夏バテとは、夏場の高温多湿のために生じる疲労、倦怠感、食欲低下、体重減少など、不快な症状の総称です。漢方医学で説明すると、胃腸の働きが低下しているため、体が十分な気(き=エネルギー)を取りこめず、エネルギー不足となっている気虚(ききょ)の状態といえます。
そこで、夏バテから回復するには、まずは不足している気を補うことがポイントとなります。具体的には、睡眠を含めた適度な休養をとるとともに、弱った胃腸に負担をかけない食事をとることを意識しましょう。
たとえば、暑さで眠れない夜が続くと、十分な休息がとれないばかりか、睡眠不足により自律神経の乱れを引き起こすことがあります。だからといって、エアコンをひと晩中じゅうつけていると、体が冷えてしまい、熟睡の妨げになります。寝入りばなの1時間程度で冷房が切れるようタイマーをかけるなど、室温が低くなりすぎない工夫をしましょう。
とくに冷房については、普段から室外と室内の気温差を5度以下にすることが望ましいです。室内の温度が下がったら、エアコンから扇風機に切りかえたり、こまめに窓を開けて温度調節するといいでしょう。
食事については、胃腸に負担をかける脂っこいもの、甘いもの、生もの、冷たいもの、辛いもの(あ・あ・な・つ・か=「ああ夏か」と覚えてください)を避けるようにします。夏バテ防止にあたっては、夏の土用の丑(うし)の日(7月下旬~8月上旬)に鰻料理を食べる風習が江戸時代から続いているようですが、実際に夏バテ中の胃腸だと、鰻の強い脂分が負担になる可能性もあるので、気をつけてください。
飲み物についても、のどが渇くからと冷たい物ばかりとると、胃腸の働きを一層弱めてしまいます。なるべく氷などは抜いて飲んだり、どうしても冷たいものを飲みたい時には一気に飲まず、また2杯目は温かい飲み物をとるようにするといいでしょう。
体内の塩分も消耗しやすいので、適度に塩分もとるようにしてください。
気を補ったら、次はその気が体のすみずみまで、うまくめぐるようにしなくてはいけません。熱中症になる危険がある日中は避け、朝夕の涼しい時に、ウオーキングやストレッチなど適度な運動をするように心がけましょう。
日本では多くの企業が、旧盆にあたる8月15日を中心に、数日間を夏季休業(お盆休み)にする習慣があります。この時期は、暑さによる疲れが体に現れやすく、夏バテを感じる時期です。お盆休みは、先祖の供養という意味だけでなく、夏バテを解消するうえでも合理的なシステムといえます。