いろいろな食べ物が豊富に出そろう秋。昔から食欲の秋と呼ばれているように、何を食べてもおいしくて、おのずと食欲も増します。なぜ秋は、食べ物がおいしく感じられるのでしょう。その理由には諸説ありますが、夏の間は暑くジメジメしているため、それが脳にストレスを与え、食欲を抑制するホルモンが分泌されます。しかし、秋にはストレスが消えるため、一気に食欲が増すのだそうです。
ともあれ食欲が旺盛になれば、今度は肥満が気になります。摂取カロリーの超過ももちろん大きな要因ですが、実は秋になると、体内の代謝システムが変化して、夏場と同じものを同じ量食べても脂肪として蓄えられる分が増える、というデータがあります。つまり、食欲の秋は肥満の秋と紙一重、といえるのです。
肥満は、話題のメタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)に通じ、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常といった生活習慣病を引き起こす原因になります。放っておくと血管を詰まらせる動脈硬化を進行させ、心筋梗塞、脳梗塞といった命にかかわる病気さえ招く危険性があることも、よく知られています。
そこで秋の肥満対策は、食欲と太りたくない欲という、二律背反的な欲をいかに両立させるかがカギ。そこで私がおすすめするのは、別の欲をもって制御する方法です。
人間の三大欲といわれる、「食欲」「性欲」「睡眠欲」をコントロールしている中枢は、それぞれ脳の中で近い場所に位置しています。ですから、旺盛な食欲を無理に抑えたりせずに別の欲、例えば睡眠欲を充実させることで対処してみるのです。
無理やりに我慢して食事制限するのではなく、「よい睡眠」をとることで脳の欲求不満を和らげ、食欲をコントロールできるようにしたほうが、手っ取り早いといえます。
よい睡眠のために意識すべきは、時間と質です。ただし、人によって体のリズムに合った睡眠時間は異なりますので、一概に長ければいいとはいえません。6時間~7時間半を目安に、十分に休息できた、という感覚を味わえる長さが適切といえるでしょう。また良質の眠りのため、夕食は軽めに、就寝の3時間前までにはすませておきます。
食べた物を脂肪として蓄積するのではなく、エネルギーに変えて効率よく消費するための体作りも必要です。もし甘い物が欲しくてたまらない人は、エネルギー(気)が足りない状態にあるかもしれません。たいていは胃腸が弱って、食べた物をうまく消化吸収できないのが原因です。ストレスや生活の乱れを減らし、消化によい温かいものを食べるなどして、胃腸を回復すればコントロールできるでしょう。