気温も高くなってきたこのごろ、とくにブーツや革靴を愛用している人は、足が蒸れやすくなっています。すると心配なのは、高温多湿を好む菌がとりついて起こる足白癬(あしはくせん)…つまり水虫です。でも足の指の皮などがむけたからといって、すぐに「水虫になった」と思うのは早計といえます。もしかしたら違う病気かもしれません。
足先からの異常な発汗が原因で、表皮がふやけてむけてしまう場合は、汗疱(かんぽう)とも呼ばれる異汗性湿疹(いかんせいしっしん)という病気を疑う必要があります。これらは水虫用の治療薬では治らないので、薬を使っても改善が見られない人は、皮膚科医の診断をあおぐといいでしょう。
異汗性湿疹は原因がよくわからず、アレルギーやアトピー、ストレス、多汗症などとの関連性が議論されています。また、汗の刺激に対して湿疹が起こるものとも考えられ、実際に手のひらや足の裏に汗をかきやすい人ほど生じやすいようです。異汗性湿疹にかかった場合、表皮の損傷は治療できるとしても、異常なほど汗をかく、という根本的な問題を解決しないと、何度でも同じ症状が出てしまいます。足先に限らず手のひらなどにも病的なほど多量の汗をかいて、表皮がむける、湿疹ができて辛い、という患者さんが最近増えています。
大人に限ったことではなく、子どもにもいます。たとえば高校の入学試験中、ハンカチが濡れてしまうほど大量の汗が出る…といったケースです。遺伝的な要因(体質)もありますが、両親はさほど目立って症状が出ないにもかかわらず、子どもにだけ強く出る場合もあるので、本人自身のケアが大事になります。この場合の原因は、過度な緊張に対して耐えられなくなっているためで、自律神経(自分の意志に関係なく動く神経)のうちの交感神経の働きが異常になっていることが考えられます。
さらに、漢方でいう水(すい=リンパ液や汗など)の働きが悪くなっている、「水毒(すいどく)」の状態も重なっていることから生じます。そうなると治療薬だけではなく、自律神経をコントロールする、体の水はけをよくする、といった三位一体のケアで対応しなくてはいけません。
自律神経のコントロールでは、精神的に生じる緊張に対して活動神経である交感神経が過敏に反応しすぎないよう鍛えるとともに、副交感神経への切り替えもスムーズになるように訓練します。仕事から帰ってきたら、たとえどんなに疲れていても、入浴はシャワーですまさず湯船に入るように心がけましょう。長期間、運動をしていなかった人は、定期的に軽いウォーキングやストレッチ体操を始めるなどして、なるべく体を動かす習慣をつけるといいです。
汗をかいたり、体を温かくして血のめぐりをよくすることは、水毒へのケアにつながります。食材では、菜の花、にんにくの芽、ウド、玉ねぎ、蕗(ふき)といった春野菜が、体を温め、水はけ増進にも効果があるといわれています。