秋風が吹くと便秘を訴える患者さんが増えます。秋に起こる便秘は、涼しくなったことでおなかが冷え、腸の働きが悪くなることが一因。漢方医学では寒暖や湿気、乾燥といった季節の変化も体に影響を与えると考えます。
秋は漢方でいう「燥(そう)の季節」。夏の間に比べて水分をとらなくなり、体内の水分量が減ります。乾燥によって便が硬くなりやすいことも便秘に影響します。
健康な便通は食事量にもよりますが、バナナの大きさ1本程度の便を毎日1回出すことが目安です。そのペースが1週間に1回程度だったり、最後にいつ排便したか覚えていないほどになると、おなかが張って苦しく、肌は荒れ、気分も憂うつになりがちです。中には便秘が慢性化し、それに伴う不調に慣れっこになってしまっている人もいます。
漢方医学の見地では、便秘は原因別に3タイプに分けることができます。
(1)おなかが張って食欲が低下し、頭が重くなるタイプ。ストレスが原因になっている可能性が高いです。
(2)手足が冷え、肩こりがひどく、女性の場合は生理痛がつらいタイプ。血液のめぐりが悪いことが原因になっています。
(3)むくみやすく、めまいがして、のどが乾きやすいタイプ。体の水分代謝が悪いことが原因になっています。
このうち秋口の気候変化に影響されやすいのは、(2)と(3)のタイプです。
血液のめぐりの悪さからくる便秘には、まずは血行をよくして冷えを改善することが大事。通勤途中の電車内など、立ち姿勢ではかかとを上げ下げする、座っている時は手足の指を揉む、足首を回すといった動作をこまめにやってみましょう。
食事は漢方薬にもなる紅花(こうか)が効果的。料理に紅花油を使ったり、紅花茶を飲むのもいいです。黒きくらげやセロリも、血液のめぐりをよくするといわれています。
水分代謝が悪くて便秘になる人は、胃腸が弱っていることが多いです。その場合、便秘だからといって水分をとり過ぎるのはかえって逆効果。まずは胃腸をいたわる食事を心がけ、同時に水分バランスを崩した状態(漢方でいう燥)を元に戻すような対策を行います。
杏仁豆腐の材料である杏仁は、漢方薬にも使われ、体を潤して便通をよくするといわれています。同じように松の実、クルミ、アーモンド、落花生などのナッツ類、はちみつもおすすめです。
健康な体の基本は「快食・快眠・快便」です。腸本来の働きを回復させ、自力で排便できるようになるために、安易に便秘薬(下剤)には頼らないようにしましょう。