梅雨や台風の季節が近づいてくると、めまいを訴える患者さんが増えます。たとえば過去にメニエール病を患った経験がある人などは、この時期に再発してしまうこともあります。
内耳(ないじ)とよばれる耳の奥には、回転運動を感知する三半規管(さんはんきかん)や平衡感覚に関する耳石(じせき)などさまざまな器官があり、それぞれリンパ液でつながっています。メニエール病は、このリンパ液の働きがうまくいかなくなって水腫(異常にたまった状態)が作られ、神経を圧迫することで、めまい、耳鳴り、難聴などの症状を呈する病気とされています。
漢方では、これも水(すい=リンパ液や汗など)の異常である「水毒(すいどく)」の症状の一つとみなします。30~50歳代の働き盛りの人に多い傾向にあり、几帳面、働き過ぎ、強いストレスの中で生活をしている人がなりやすいといわれています。さらに、この時期にメニエール病が再発してしまうのは、気圧の変化によって、体内の水(すい)の調整がうまくいかないことが原因だとも考えられます。
季節の変わり目であるこの時期は、過労を避け、ストレスを発散するとともに、体内に余分な水(すい)をため込まないようにしましょう。
とくにストレスについては、まったくなしでは生きられない以上、とにかくリラックスすることを考えるといいでしょう。毎晩、37~40度のぬるめの湯に30分以上かけて入浴するだけでも、自律神経(自分の意志に関係なく働く神経)の一つである副交感神経が働いて、高ぶっていた交感神経を鎮め、筋肉もやわらぎ、リラックスできます。
カラオケを歌いに行くことも効果的です。大きな声を出すと、副交感神経が優位に働き、体を緊張状態から解きほぐしてくれます。食事も副交感神経を優位に働かせるので、いつも急いで食事をしている人は、時には、ゆったりと時間をかけて食事を楽しむといいでしょう。
体内の水分調整の基本は、尿と汗を出すことです。スポーツや散歩などで体を動かすことを習慣化するのがいいのですが、そういった時間や体力がない人は、サウナや岩盤浴などで汗を意識的に出すようにしてください。
なお、女性については、毎月の生理前にめまいやむくみを訴える場合が少なくありません。これは、女性ホルモンの一つである黄体ホルモン(プロゲステロン)に、水分をかかえこむ性質があるためです。生理前は過労や睡眠不足を避け、汗を流して気分転換を上手に行うようにするといいでしょう。