私たちの体は、夏の間、気温が上昇すると汗を出して体温を一定に保とうとするため、一時的に軽い脱水状態に陥ります。そこで水分を補給、再び汗をかいて脱水状態に…といったサイクルを繰り返しているのです。
その過程で、(1)水分を必要以上にとってしまい、体内に余分にたまって排泄や循環が悪くなる(水毒=すいどく)、(2)食欲不振のため、栄養価の低い、さっぱりとした食事が多くなりカロリーや栄養素が不足する、(3)熱帯夜が続いて睡眠不足になる、といった要素が重なり合うと、だるく、疲れやすいといった夏バテ症状が現れます。
こうした夏バテの対処には、水分と栄養の補給が基本となります。
まず水分補給について。
汗をかいた後の体は、自律神経の一つである交感神経が優位になっている場合が多く、いわゆる興奮状態にあります。そうした時に緑茶、紅茶、コーヒーなどカフェインが多い飲み物をとると、食欲不振や睡眠不足を助長させる危険性があります。おすすめなのは、ノンカフェインの水や麦茶などです。
とはいえ水や麦茶ばかりだと、汗によって失われた塩分の補給ができず、水分をとっていても熱中症にかかり、筋肉の痙攣(けいれん)などを起こすことがあります。適度な塩分を含む飲み物も、時々はとるようにしましょう。
梅干しや切り昆布などをお茶に入れると、手軽に梅茶や昆布茶が作れます。スポーツドリンクもいいですが、運動中のエネルギー補給用に、糖質を多めに含んだ製品もありますので、血糖値が気になる人は注意してください。
また、栄養補給では鰻(うなぎ)や豚肉のように、疲労回復に効果があるといわれるビタミンB1を豊富に含む食材が挙げられます。とくに豚肉は、必須アミノ酸を多く含んだたんぱく質も豊富なので、夏バテ時のスタミナ源になります。
ただ、鰻料理や豚カツ、焼き肉といったメニューは、脂っこさも気になります。夏バテといっても初期の軽いうちや、胃腸が丈夫な人の場合はいいですが、体力の低下が進行した段階では、脂っこさが体の負担になってしまいます。
とくに現代人は、エアコンによる夏場の冷えという、新たな環境要因による夏バテも考慮しなければいけません。昔ながらの夏バテ対策を講じても、なかなか改善がみられない場合は、前回「夏バテと鰻の問題」でご紹介した、現代版の夏バテ対策も参考にしてみてください。