免疫は、「疫(病気)を免れる」と書きます。つまり病気にならないようにする、ということ。私たちの体には、体内環境を一定に保つための様々なシステムが、生まれながらに備わっていて、免疫についても例外ではありません。これらのシステムのことを、専門的にはホメオスタシス(恒常性維持機能)といい、免疫系、神経系、内分泌系の3つの系統から成り立っています。
免疫系は、健康に害をおよぼす細菌やウイルスなどが、外部から体内に侵入しないように防御したり、体内で生じた有害なものを排除する防衛システムです。このように体を守る力のことを免疫力といいます。
私たちの体内では、毎日100個以上のがん細胞が発生しています。それなのに、すべての人ががんを発症するわけではないのも、がん細胞を攻撃し排除する免疫力があるおかげなのです。
しかし現代人はストレス、睡眠不足、運動不足、食生活の乱れなどが原因で、免疫力が低下しがちです。免疫力が低下すると、体内で病原菌などが増殖しやすくなります。例えば、かぜを発症させるウイルス。健康な状態なら、かぜを引いた人に少々近づいても、そのウイルスに対する免疫抗体をもっていれば、うつされる心配は低いでしょう。ですが免疫力が低下していると、免疫抗体があっても働かないので、発症することがあります。
免疫力低下の要因としては、老化もあげられます。歳をとるごとに「かぜを引きやすくなった」と感じる人は、加齢によって免疫力が徐々に低下しているかもしれません。
秋は、かぜやインフルエンザが、そろそろ心配になる季節。流行が始まる前に、免疫力を十分高めておくことをおすすめします。
漢方では、免疫力には「気」がかかわっていると考えます。生命活動の源、エネルギーを意味する「気」には、生まれながらにしてもっている「先天の気」と、食事によって毎日作り出される「後天の気」の2種類があります。そこで、漢方の知恵を利用して免疫力の増強を行うなら、「後天の気」を補うようにするのがいいでしょう。まずは毎日の食事で、栄養バランスを整え、腹8分目を心がけます。
動物による実験では、エサを満腹量の70%まで減らして与えたところ、寿命が延長できたという結果が報告されているほどです。
実は「免疫力を高める」という発想は、西洋医学においては、あまりなじみのないものでした。西洋医学の方法では、細菌やウイルスは、薬やワクチンを使って排除します。一方、漢方では「気」の働きを高め、病気に対抗できる強い体を作ることを昔からの知恵で行ってきました。そのため、漢方薬にも免疫力を高める効果があるものが多い、ということが最近になってわかってきています。