秋も深まってくると、顔の表面や唇が乾いたり、女性にとっては髪の毛のパサツキも気になります。乾燥がやっかいなのは、皮膚のバリアがなくなり、肌荒れなどのトラブルを引き起こしてしまうことです。
10~11月は、木枯らしが吹き始めるころ。漢方では秋を「燥(そう)の季節」と呼び、乾燥に対する養生を心がけなければいけない、としています。乾燥対策としては、化粧水やクリームなどで肌を潤わせたり、髪の毛をしっとりさせる効果のあるヘアケア剤を使う人が多いでしょう。ですが外部からのケアだけでは、十分とはいえません。
乾燥による不快の原因は、温度や湿度など、気候や環境が影響するものばかりではありません。体内に血液が不足している状態を「血虚(けっきょ)」といい、この状態になると、乾燥症状や貧血などが起こりやすいと考えています。
とりわけ皮膚は、血液が酸素、水分、ホルモン、ミネラルといった栄養分を運んでくれることで、潤いやハリなどを保っています。しかし、血液の量や成分が不足し、細胞のすみずみにまで十分な栄養分が行きわたらないと、栄養失調状態になり、表皮の乾燥が始まるのです。
中には、「肌は乾燥しているけど、病院で貧血と診断されたことはない」という人も多いことでしょう。西洋医学でいう「貧血」は、血液中に含まれるヘモグロビンというたんぱく質の値や赤血球の数が、一定の基準以下である状態を指します。しかし漢方では、皮膚が乾燥する、目がかすむ、爪がもろい、経血量が少ないといった症状のほか、疲れやすい、立ちくらみを起こすというような貧血に似た症状がある場合、血液の成分数値に異常がなくても「血虚」とみなします。
血虚を改善するには、血を消耗させないとともに、血を補うことが大切です。血は夜更かしするだけでも消耗してしまうので、なるべく12時前に就寝し、十分な睡眠をとります。目を使うこともよくないので、テレビは見過ぎないように。
血を補うには、食事を工夫します。桑の実、ぶどう、ライチ、ナツメ、リュウガンなどのフルーツや、松の実、落花生などのナッツ類はとても有効。このほか黒ごま、黒豆、黒米といった黒色をした食材もおすすめです。
肌に潤いと栄養を与えるならフカヒレ、牛すじ、鶏手羽などのコラーゲンをたっぷりとります。ココナッツミルク、白きくらげなども肌を潤す効果あり。地肌が潤えば、健康な髪が生えてくることも期待できます。