寒くなると、トイレに行く回数が増えがちです。「夏にくらべると、とっている水分量が少ないはずなのになぜ?」と不思議に感じる人もいるかもしれません。もちろん水分をたくさんとれば、トイレの回数は増えますが、体が冷えることでも回数は増えます。
なぜなら体が冷えると、汗をかかないからです。汗は夏だけかくものではなく、不感蒸泄(ふかんじょうせつ)により、春、秋、冬も少しずつ出ていて、余分な水分を体の外に排出しています。私たちの体は、汗が多く出る夏の間は、尿の量を少なくして、体内からあまり水分が逃げないよう調節しています。一方、冬になって寒くなると、汗をかきにくくなるので、排出すべき体内の水分は尿として出すことになります。
結果、トイレに行く回数も増えるわけです。
この「寒さにともなう尿」は、黄味が薄く、透明に近い色で、サラサラしているといった特徴があります。漢方では、「尿の色」は体が発する大切なシグナルの一つだと考えています。実際の診察でも、尿の濁りやにおい、量、回数などを患者さんに問診しています。
皆さんが日常で、尿の色が透明に近かったら、「体が冷えているかもしれない」と自覚するバロメーターになります。その場合は、体を外と中から温めましょう。腹巻きやカイロなどで下腹部を温めるのと同時に、温かい飲み物や食べ物をとるようにします。
とくに女性の場合は、体の冷えが膀胱炎につながることがあるので要注意です。冷えによって尿意を頻繁に感じながらも、なかなかトイレに行けずに我慢してしまうことがあります。しかし、男性にくらべて尿道が短く、肛門にも近いため、膀胱内に滞留した尿に雑菌が入りこんでしまい、膀胱炎にかかりやすい傾向にあるのです。ですから女性は、体を冷やさないようにするとともに、尿意を感じたら、我慢しないですぐに排泄することが予防となります。
なお、成人の平均的なトイレの回数は、一般的に日中は7~8回といわれています。これらは摂取する水分量や、汗などの不感蒸泄量によっても異なりますが、「日本排尿機能学会過活動膀胱ガイドライン(2005)」によると、日中に8回以上トイレに行く場合を昼間頻尿(ちゅうかんひんにょう)と定めています。また、夜、寝ている時にトイレに起きる人もいますが、1晩1回ならまず問題はありません。しかし1日 10回以上、うち就眠時 2回以上行くようだと、病気が隠れていることも考えられます。
漢方では、泌尿器は五臓の一つ「腎(じん)」との関係が深いと考えています。「腎」は加齢による老化にもかかわっているので、男女とも更年期に入ると、膀胱に尿をためておけなくなってトイレが近くなったり(頻尿)、残尿感が残ったり、排尿の勢いの衰えなどを実感するようになります。
ただ、膀胱に近い場所に病気があると、刺激を受けて頻尿になりがちです。膀胱腫瘍、前立腺疾患、子宮筋腫、腎疾患、尿路感染症などの病気が挙げられます。尿量が極端に増えた場合(多尿)は、糖尿病や内分泌疾患、腎機能低下、精神的な疾患なども考えられます。気になる症状については、一人で悩まずに専門家の意見や判断をあおぐことをおすすめします。