私たちの毛髪は、発毛→成長→抜け落ち→新生というサイクルを常に繰り返します。しかし、老化などによって、この一連のヘアサイクルに乱れが生じると、抜け毛が多くなってしまいます。また、秋の冷たく乾燥した外気も、抜け毛を増やす要因の一つです。
毛髪は、毎日100本程度は寿命を迎え、ごく当たり前に抜け落ちています。しかし「何だか最近、抜け毛が多い」と感じられるようなら、もしかしたら、毛髪を支える地肌や毛根の老化が始まっているのかもしれません。
漢方では、毛髪は五臓の「腎(じん)」との関係が深く、抜け毛は腎が衰えている「腎虚(じんきょ)」の状態を反映していると考えています。そして腎の働きを弱めるのは、加齢による老化だけではありません。その証拠に、最近では、20代、30代の若い人が円形脱毛症などで悩んでいるケースも多いのです。腎はストレスの影響を受けやすいため、夜更かしや暴飲暴食など、不規則な生活習慣もその衰えを助長させます。
腎を強化するには、まずは食事から。漢方では「塩辛い味」のものは腎を補うと考えます。ミネラル分を含む自然塩、しょう油、みそといった調味料、わかめ、昆布、ひじき、もずく、海苔、あさり、しじみなどの海産物が塩辛い味に分類されます。ただし、血圧が高めの人は、十分に注意してとる必要があります。
このほか腎を補う旬の食材では、黒豆、大豆といった豆類、クルミ、ごま、ぎんなんなどもおすすめです。なお、冷たいものや生ものは、体のエネルギーを消耗させ、内臓の若さを損ねるといわれています。なるべく火を通して食べましょう。
古来、中国では毛髪を「血余(けつよ)」と呼び、髪は「血(けつ)」、つまり血液から作られると考えられていました。
実際は、毛細血管から栄養補給を受けて、毛母細胞が分裂を繰り返して成長していきます。しかし、血液の量が少なかったり、作用が弱い状態(漢方では「血虚(けっきょ)」といいます)になると、髪に十分な栄養が行かず、成長が妨げられ、抜け毛や細りなどのトラブルが生じます。秋に起こる外気の乾燥は、血虚を引き起こしがちなので、抜け毛が気になることも多いのです。
不足している「血」を補うには、スッポン、鯖、ほうれん草、松茸、栗、落花生、松の実などの旬の食材のほか、黒ごま、黒きくらげもいいでしょう。
腎虚や血虚は、抜け毛だけなく白髪にも影響します。白髪も老化現象の一種で、誰でもいずれは等しくなるものですが、若白髪の人も増えています。抜け毛も白髪も元をただせば原因は同じ。くれぐれも秋の夜長での夜更かしには気をつけて。