秋の夜は過ごしやすいので、読書やテレビ、ゲームなどに夢中になって、夜更かしする人が少なくありません。睡眠の乱れは、体に様々な不調を引き起こしますが、その中でも注意を必要とするのは高血圧。病院で診察をしていると、例えばオリンピックやワールドカップなどが、日本で夜中に放送された翌日は、必ずといっていいほど、血圧が平常値より10~20mm/Hgほど高くなっている患者さんが多く来院されます。
これは、大抵の場合、夜遅くまで起きていたせいで睡眠不足になり、心臓や血管を支配している自律神経が乱れたため、血圧に変調を招いたのが原因と考えられます。
一時的な血圧の上昇は、すぐには体に影響を与えなくても、たびたび重なると高血圧症という病気に発展しかねないほか、心臓病、脳卒中、腎臓病などを引き起こす可能性もあります。しかも秋から冬は、気温がぐっと下がるため、自律神経のうちの交感神経が緊張し、血管を収縮させるので、その点でも血圧が高くなりやすいのです。ですから、日ごろから血圧が高めと感じている人は、この季節こそ要注意といえるでしょう。
高血圧症は、糖尿病と同じように初期の段階や軽症だと自覚症状がなく、なかなか気づくことができません。普段から血圧を測る習慣をつけ、数値の変動をチェックすることが大切です。ちなみに、日本高血圧学会の「高血圧症治療ガイドライン2009」によると、若年者および中年者の正常値は、最高血圧130mm/Hgかつ最低血圧85mm/Hg未満となっています。
血圧を上げないため、食事でまず気をつけることは、塩分をとりすぎないこと。日本高血圧学会では、1日の塩分摂取量を6g以下に抑えるようすすめています。
とはいえ、外食や加工品では、入っている塩分量がわからない場合が多く、コントロールするのが大変です。外食時には塩分の少なそうな料理を選択する、一般的に塩分を多用しがちな加工食品はなるべく避ける、自炊にあたっては、食塩のほか、しょう油やみそなどの調味料にも注意する、といった点を心がけましょう。
最近では、お弁当を持参する人が増えていると聞きます。節約の意図からかもしれませんが、血圧をコントロールするにあたっても、とても有効な手段といえるでしょう。
もちろん、肥満、過度のストレス、飲酒、喫煙も、血圧を上げる要因なので、不摂生な生活習慣にならないようにすることは基本中の基本です。