冬に起こる不調のうち、「足の臑(すね)が極端に寒い」「暖かい部屋に入っても体がなかなか温まらない」「暖房した部屋にいるのに手足が冷たい」などと感じる場合、漢方の所見では、体のバランスが崩れている可能性あり、と考えます。
冬は寒いのが当たり前なのですが、漢方の考え方に基づくと、体のバランスが整ってさえいれば、寒さによる不調は軽減されます。ですから「寒さに強い体」を、養生によって作ろうと考えるのです。
例えば、「足の臑が極端に寒い」と感じている人は、筋肉量の減衰、筋力の低下があるかもしれません。筋肉は心臓と同様に、血液を押し流すポンプの役割を果たしています。また、体熱(カロリー)の60%を作り出しています。筋肉で作られた体熱は血液によって全身に行き渡るので、肝心の筋肉が弱っていると、熱の生産や伝達がうまくいかず、その結果、体が冷えて寒さへの耐性も低下してしまいます。
私たちの体は、年をとると、老化によって筋肉が落ちてしまいます。そのため年齢に合わせ、意識的に筋肉を動かしておく必要があるのです。また最近では、若いのに筋肉がついていない人も見受けられます。
手軽に筋肉を動かすには、ストレッチ運動がおすすめです。
ストレッチとは、筋肉を伸縮させる運動のこと。寒さによって縮こまった筋肉の緊張をほぐし、瞬発性や柔軟性を高めます。また、ストレッチを行うことで、全身の古い血液がいったん心臓へと戻り、新しい血液が筋肉に送り出されます。その結果、血液循環が促進され、体の冷えの解消につながるのです。
太もも、尻、脇腹などにある、比較的大きな筋肉をゆっくり伸縮させると効果的です。
「暖かい部屋に入っても体がなかなか温まらない」「暖房した部屋にいるのに手足が冷たい」という人は、自律神経(自分の意志に関係なく動く神経)の働きが衰えていると考えられます。
通常、寒い場所から暖かい場所へと移動すると、5分もたてば体が温まってくるものです。それが、なかなか温まらないのは、自律神経をつかさどる交感神経と副交感神経の切り替えがうまく行われていないからかもしれません。寒い場所では、活動神経と呼ばれる交感神経が優位に立ちますが、交感神経が緊張したままだと、熱を逃がさないよう全身が縮こまり続け、血行も悪い状態なので、手足など体の末端部分が温まらないのです。
こちらも原因としては、加齢による老化やストレスなどが挙げられます。といって、年をとることは誰にも避けられないし、ストレスをまったく受けない環境で暮らすことも不可能です。そこで、原因を取り去るのではなく、自律神経自体を強くすることで、寒さに強い体づくりに努めます。
37~40度のぬるめの湯をバスタブに張り、30分ぐらいかけて入浴すると、交感神経を鎮め、副交感神経が優位になる切り替えを促します。すると全身の血管が拡張し、血液の循環がよくなって、体が温まってきます。適度な運動も、自律神経を鍛えるのに役立つという研究結果があり、前述したような筋肉を動かす点からもおすすめです。
冬の間に自律神経を鍛えておくことは、自律神経のバランスをとくに崩しやすいといわれる春を快調に過ごすことにもつながるでしょう。