隠し事もあまり度重なれば、知れわたってしまうことをいう。貪欲(どんよく)は厳に慎むべきであろう。阿漕が浦は伊勢(いせ)国阿濃郡(三重県津市)の海岸をいう。このあたり一帯は伊勢神宮の膳部調達のために禁漁区とされており、年に一度のほかは魚介の殺生は禁じられていた。ところが、阿漕という名の漁師が、老母の病に効くという魚をもとめて毎夜のように密漁に出没し、網を引いた。しばらくのあいだは、人にも知られなかったが、度重なってついに発覚し、捕らえられて簀巻(すま)きにされ、沖合いに沈められた。それからは、このあたり一帯を阿漕が浦と呼ぶようになったという。
〔出〕古今和歌集(こきんわかしゅう)/源平盛衰記(げんぺいせいすいき)/太平記(たいへいき)
〔会〕「おまえのように、そういつも同じ言い訳じゃ、いつかはばれるさ」「阿漕(あこぎ)が浦に引く網かあ」「ま、麻雀(マージャン)の回数をまず減らすことだな」