自分の意志ではなく、人に連れられてゆくこと。あるいは気が重いまま、他人と行動を共にすることをいう。昔、信濃(しなの)国(長野県)の善光寺近くに住む老嫗(ろうう)が、隣家の牛が放たれて洗濯物の布を角に引っ掛けたまま、善光寺の境内に入ってしまった。後を追った老嫗が、その場所こそが霊場であることをはじめて知り、その後はたびたび参詣(さんけい)するようになって、来世の幸せを祈願したという説話による。
〔出〕今昔物語(こんじゃくものがたり)
〔会〕「女房にせがまれて買い物に付き合ったんだが、帰りに長いあいだ連絡が取れなかった旧友にばったり会ってね」「牛に引かれて善光寺詣(まい)りってやつだ。たまには女房孝行もするもんだな」