人の世の浮き沈みは、まことにはかないものであるというたとえ。むかし盧生(ろせい)という貧乏な書生が、趙(ちよう)の都・邯鄲で栄耀(えいよう)栄華が意のままになるという枕(まくら)を仙人(せんにん)から借り受け、うたた寝をした。このあいだに、50年余の栄華の思いを遂げることができたが、夢が覚めると、炊(た)きかけの粟(あわ)もまだ煮えておらず、自分は相も変わらぬ貧乏書生であったという、李泌(りひつ)の物語にもとづく説話。
〔類〕一炊の夢/邯鄲夢の枕/盧生の夢
〔出〕李泌(りひつ)・枕中記(ちんちゅうき)
〔会〕「中村のやつ、株の大暴落で大損したってさ」「いや、ちょっと前までは財テクの達人なんていわれて豪勢な暮らしをしていたけど、今じゃ借金だらけ」「いやあ、邯鄲(かんたん)の夢だね」