兎(うさぎ)は前足が短く後ろ足が長いから、山を駆け下るときは、恐ろしさのあまり「南無観世音菩薩(なむかんぜおんぼさつ)」と唱えながら下りる。逆に山を登るときは、少しも怖くないから「観音」の恩などは忘れて、観音なんぞ尻食らえと言いながら飛び跳ねるという。恩を仇(あだ)で返して、あとを顧みない人間にたとえる。
〔類〕尻暗い観音
〔出〕仮名草子(かなぞうし)・浮世物語(うきよものがたり)
〔会〕「一生恩に着ますから、ほんの3万円でいいんです」「借金するときだけは調子いいけど、あとは尻食(しりく)らえ観音(かんのん)だからな。ちょっとでも催促したら、私は鬼(おに)か蛇(へび)にされちまうんだ」