(「轍」は車のわだち。わだちのわずかな水のなかで鮒(ふな)が苦しみもがいているところから) 危急が目前に迫っていることをいう。貧乏であった荘子(そうし)が魏(ぎ)の文公のところへ穀物を借りに行ったところ、文公は年貢(ねんぐ)を取り立てたあとにしてくれと答えたときに、荘子が語ったという故事による。
〔類〕後の百より今の五十/牛蹄(ぎゅうてい)の魚/涸轍(こてつ)の鮒
〔出〕荘子(そうじ)
〔会〕「おい、長男の聡ちゃんが交通事故に遭ったってほんとうか」「ええ。ところが相手は保険に入ってなかったらしくて、当面の入院費はこっちで工面しなければ……。まさに轍鮒(てっぷ)の急の心境です」「分かった、金のことは私から会社に言っておく。いいから、早く帰れ」