(「沐猴」は猿(さる)) 猿が冠をかぶっても不似合いなように、どんなに表面を飾っても、内面が充実していなければ、不釣り合いであることにたとえる。中国の秦(しん)末の武将・項羽(こうう)が、都とするのにふさわしい関中をあとにして、故郷に錦(にしき)を飾りたがったとき、ある人が「猿が冠をつけたような男」と評した。その男は即座に縛られ、釜茹(かまゆ)でにされたという故事による。
〔類〕狼に衣/鬼に衣/猿に烏帽子(えぼし)/虎(とら)にして冠する者/猟師の身に法衣を服す
〔出〕史記(しき)
〔会〕「安田さんはいつもりっぱな格好をしてるけど、人間的にはあまり信頼できないね」「まったく、彼のように外見と中身がちぐはぐな人間を、沐猴(もっこう)にして冠すっていうんだろうな」