一度は好ましい状態になったものが、再び元のつまらない状態に戻ることをいう。奈良県の大和郡山の城主・筒井順昭が病死したとき、息子の順慶は1歳の幼児であった。城を攻められるのを恐れた順昭は、遺言してその死を隠し、木阿弥という目の不自由な人を身代わりに立てて、3年後にその死を公表した。けっきょく、木阿弥は元の木阿弥にかえったという説にもとづくという。このほか木阿弥と呼ばれた修行僧が、修行を怠り再び妻のもとへ戻ったからという説、あるいは農民の木工兵衛が僧に献金して、なにがしの阿弥という称号を得たが、村人は相変わらず木工阿弥などと呼ぶため、買名の苦労も空しかったという説など、さまざまであって一定しない。
〔類〕元の木庵(もくあん)/元の木椀(もくわん)
〔出〕天正軍記(てんしょうぐんき)
〔会〕「木村のやつさあ、子供ができたから競馬をやめたと言ってたのに、こんどは競艇(きょうてい)にこり始めたみたいだぜ」「なんだ、それなら元の木阿弥(もくあみ)じゃないか」