日本三大○○という言い方があるが、二つまではなるほどそうだな、と納得しても、さて三つめとなるとどうか、というケースが多い。たとえば日本三大滝。日光・華厳の滝、熊野・那智の滝の二つは文句なし。三つめ、茨城の袋田の滝…、うむ、ウチの滝のほうがと次々に各地から手が挙がりそうだ。そこで、日本三大祭り。東京の神田祭、京都の祇園祭、大阪の天神祭がその三つなのだが、歴史、スケール、豪華さ、特有のウキウキ感、どれをとっても異議なし!
なかでも、真夏の祭りとして日本一と言われる京都の祇園祭。これは疫病払い祈願として約1100年前に始まった八坂神社の祭礼。祭事、神事は1カ月も続くが、ハイライトは7月17日の山鉾(やまぼこ)巡行。室町通り、新町通りなどの各鉾町に建てられた32基の「鉾」と「山」が、午前9時を期してゆっくりと動き出す。先頭は、稚児を乗せた長刀鉾である。
ともあれ、京都という都会の、四条通り、河原町通りといったメーンストリートを占拠しての大巡行。「動く美術品」山鉾の豪華絢爛さに加えてコンコンチキチン、祇園囃子(ぎおんばやし)のにぎやかさ。そこに、都の祭を千年以上にわたって担ってきた京の町衆の誇りと心意気を見る。
1968年、日本映画が急速に斜陽化した時期、銀幕の大スター中村錦之助(萬屋錦之介)主演で、日本映画復興協会が製作した「祇園祭」という映画がある。応仁の乱で衰退した京都を、祇園祭を通じて復興しようとした町衆の物語。錦之助は、そこに日本映画復興の思いを託したのだろう。もっと評価されてよい名画である。
岩下志麻(63年)、山口百恵(80年)で映画化された川端康成の「古都」。双子のヒロインがすれ違う「宵山」の場面が目に浮かぶ。宵山は巡行の前夜で、この夜が最も祇園祭らしいという人は多い。宵山の夜、吉田家、杉本家など、鉾町の旧家が所蔵の「お宝」を見せてくれるのが「屏風祭」。この町の懐の深さを実感するひとときである。