チリンチリンという涼やかな音。耳からの涼感は、ときにエアコンに優る。最近では「ヒーリング効果」も報告されている風鈴は、風鐸(ふうたく)から派生したという。風鐸とは、お寺の塔やお堂の庇(ひさし)の四隅にぶら下げられた青銅の鐸(さなき)。うむ。では、鐸とは何か、ということになる。
古代の遺物で「銅鐸」はご存じだろう。銅製の鐸。この鐸は、鐘形の鳴り物。中空の器に舌(ぜつ)を垂らし、これを揺らせて音を出し、何かの知らせにする。ハンドベルのようなものか。
この鐸を屋外の風に揺らせたのが風鐸。その音は厄除けとされたという。そして、風鐸を小さくし、お寺ではなく普通の人々の生活の中に取り入れていったのが、風鈴である。室町期には茶室にも用いられたとか。
それにしても、風の鈴。なんと美しく、ゆかしいネーミングだろうか。先人に感謝したい。
風鐸は青銅製だったが、風鈴は素材によって音が異なるのも一興。伝統の南部鉄瓶の技術が生きる南部風鈴。その涼しげな音は、環境庁(現・環境省)選定の「日本の音風景100選」にも選ばれている。吹きガラスの江戸風鈴のキリッと軽い「粋な」音。小田原風鈴は、鋳物の硬質な音、和歌山の備長炭風鈴は備長炭の硬質な音が涼しい。
ガラスがあれば、焼物もある。有田や備前といった日本の代表的な焼物でできた風鈴もある。産地ごとの音色の違いを楽しむのも一興だ。
変わりものでは、姫路の伝統工芸・明珍火箸風鈴。明珍火箸を何本かぶら下げ、その当たり合う音を愛(め)でる。硬い鉄独特の澄んだ音が魅力である。
首都圏では、独特のだるま風鈴、ぼたん風鈴が売られる「西新井大師風鈴まつり」(2007年は7月14日~8月5日)、全国から800種もの風鈴を集める「川崎大師風鈴市」(7月18~22日)が人出でにぎわう。関西方面では奈良・橿原(かしはら)のおふさ観音の風鈴まつり(7月1日~8月31日)が催される。