仏教の代表的な年中行事として、毎夏、全国的に行われる「お盆」だが、一方で「お宅のお盆は、新暦? 旧暦?」という会話も、よく聞くところ。
というわけで、まず、期日を確認しておこう。7月15日を中心に、というのは昔から変わらず、そこに地方性が加わって微妙に期日が異なるということは従来からあった。その上に、陰暦(旧暦)から陽暦(新暦)に、という明治期(1872年12月)の暦の大変革があり、地域によってお盆を催す期日がさまざま、という事情になってしまったのである。
現在の一般的な期日は、先祖の霊を家に迎える「迎え盆(盆の入り)」から、彼岸(ひがん)に送り返す「送り盆(盆の明け)」までの、7月13日から16日(15日の地域も)。もともとの15日中心から、先祖にできるだけ家に長く留まっていてほしいという願いからか、次第に期日が延びて、現在の期間になったという。
この7月13日から16日(15日)の期間を、新暦、つまり現在の私達のカレンダーによって行うのが、「新暦のお盆」。ただ、日本の農作業は季節の巡りに沿っており、農業の動向と旧暦の年中行事がうまくマッチしていた。それが新暦では、お盆が農繁期に当たるという事態に。このため、ひと月遅らせてお盆を行う「月遅れのお盆」もかなり多くなったのである。このほか、旧暦の7月13日から16日で行っている地方もある。
お盆は、正式には「盂蘭盆会(うらぼんえ)」という仏教行事で、古いインドの言語であるサンスクリット(梵語)の「ウランバナ」に漢字を当てたもの。ウランバナは「激烈な苦痛」という意味になり、その苦痛から救うために「盂蘭盆会」の供養を行うとされている。インドや中国にも類似の行事があるが、それぞれの国の習俗と、仏教の供養会が合体した特色を持つ。日本でも夏に「先祖の霊が帰る」という民間信仰があり、それに飛鳥時代の657年(斉明天皇の3年)以降行われていた盂蘭盆会の行事が融合して、今の“お盆”になったといわれている。