日本人のDNAを刺激する盆踊り。英語でBon Dancing(Dance)。それは基本的に、7月13~16日の盂蘭盆会(うらぼんえ)に、先祖の霊への供養として踊られたものである。しかし、室町末期あたりから、この踊りは民衆の大きな娯楽となり、夏には欠かせないイベントとなった。代表的な盆踊りといわれる四国徳島の阿波踊りも、月遅れのお盆に近い、8月の12日から15日の4日間開催される。
盆踊りの形式には二通りあり、一つは円舞式。東京音頭や河内音頭のように、輪になって踊りながらぐるぐると回るもの。もう一つは行進式で、その典型的な盆踊りが、阿波踊りである。
チョチョンガチョンという、ゆったりとしたノリが一般的な日本の踊りの中で、チャンカチャンカという阿波踊りの4分の2拍子は、独特の高揚感を誘う。
阿波踊りの起源については二、三の説があり、まず1586(天正14)年、藩祖・蜂須賀家政(はちすかいえまさ)の徳島城落成を民衆が祝って、大いに踊ったという説。
もう一つは、1578(天正6)年の盂蘭盆に、勝端(しょうずい)城の十河(そごう)氏が開催した風流(ふりゅう)踊りを原型とするという説。この風流という踊りは、中世に大流行した民衆の群舞で、各地の盆踊りに影響を与えている。ただ、どの説も、背景に民衆のはじけるような熱狂がある。
熱狂といえば、この阿波踊りのエネルギーが、幕末の騒乱的社会現象「ええじゃないか」につながったといわれる。たしかに、ご存知、阿波踊りの「えらいやっちゃ、えらいやっちゃ」と繰り返す煽(あお)り方と、「ええじゃないか、ええじゃないか」と叫び踊りながら行進したという騒乱は、通じるものがある。その大騒ぎが、幕末の社会不安、倒幕への雰囲気を醸成したともいわれるのだから、踊り侮(あなど)るべからず。あのリズムで「踊る阿呆に見る阿呆 同じ阿呆なら 踊らにゃ損ソン」と囃(はや)されると、本当にそういう気になってくるから不思議である。
近年は、東京・高円寺(こうえんじ)をはじめ阿波踊りを名物にしている街は多いが、やはり本場徳島の踊りは別格。豪放、奔放な男踊り、ピンクの蹴出(けだし)がなまめかしい集団美の女踊り。熱狂の現地で、ぜひ生で堪能したいものである。