「月々に月観る月は多けれど月観る月はこの月の月」。
夜空の月と暦の月をうまく詠(よ)みこんで、中秋の名月の「月見」のテーマを浮上させた歌。誰の作ともわからないが、こういうものこそ国民の財産というのだろう。
「この月の月」それは、陰暦8月15日の月、いわゆる「十五夜お月さん」。元来、「月見」はこの中秋の名月を愛で、夏の実りを感謝し、秋の豊穣を願う、一種の収穫祭としての観月の宴。この十五夜の観月には、収穫物として里芋を供えるので「芋名月」ともいわれる。
ただ、この「名月」、秋の長雨と重なり、見逃すことも多い。しかし、我々日本人にとって、「月見」は十五夜だけではない。「月見」のチャンスは、もう1回ある。それが「後(のち)の月」。陰暦(旧暦)9月13日の月、いわゆる「十三夜」。季節もほぼひと月移り、こちらは枝豆を供えて「豆名月」とも呼ばれる。我々は、この十五夜と十三夜の月を愛でることを総称して、「月見」というのである。
十五夜の月見のほうは中国伝来の中秋節と混交し、宮中行事にまでなったが、十三夜のほうは日本独自の民間行事。こうして日本人は2回の月見を楽しむようになったわけだ。お供えのススキは、月光の霊気が宿るのか、あとでこれを軒につるしておくと、年中無病息災だとか。また、中国での月餅にあたる月見団子は普通12個、陰暦の閏(うるう)月がある年は13個供えられる。
この38万km離れた「隣の天体」を眺めながら、地球人はいつかそこへと考えてきた。そうして、アメリカの宇宙船アポロ11号のアームストロング船長が、人類初の一歩を月面に踏み出したのが、1969年7月20日のことである。
いくつかの物語を残して月に帰ったのは「かぐや姫」だが、日本の宇宙航空研究開発機構が2007年9月14日に打ち上げた月周回衛星も「かぐや」と命名された。アポロ計画以降最大規模の月探査となるこの打ち上げ。「月見」をしながら、かぐや号の健闘を祈ろう。