「よろしくお願いしまーす!」という黄色い声に振り返れば、見慣れた中学校の制服を着た女の子たち。そうか、赤い羽根の共同募金が今年も始まったんだ、という感慨がある。
毎年10月1日から始まる「赤い羽根共同募金」運動。この日から12月31日までの3カ月間を募金活動の期間としている。このほかに、12月の1日から31日までの間に行われる「地域歳末たすけあい」運動と「NHK歳末たすけあい」運動も共同募金として位置づけられている。
この共同募金は社会福祉法人「共同募金会」が行う事業ではあるが、「社会福祉法」に基づく活動であり、活動の期間も厚生労働大臣によって定められたもの。有名なリンカーンの「人民の、人民による、人民のための政治」のフレーズになぞらえれば、「民間ボランティアによる、民間の社会福祉事業に必要な資金を得るための、民間の募金活動」ということになろうか。
いずれにしても、少年少女が通行人に募金を呼びかける「赤い羽根」の街頭募金の始まりは、その年も残り4分の1という社会的なサイン。戦後に定着した風物詩である。もちろん寄付金を募るほうも、するほうもボランティアだから、金額は決まったものではない。募金に応じれば、額がいくらであろうと、志ある者のしるしとして胸に「赤い羽根」が付けられる。
赤い羽根は、共同募金発祥の地であるアメリカで行われていた「善行」のしるし。日本では昭和22(1947)年から厚生大臣の管轄でスタートした共同募金だが、その翌年から赤い羽根が登場した。かの地では水鳥の羽だったというが、我が国では不要になった鶏の羽が用いられている。
敗戦後間もない頃には、貧困や病に苦しむ人々を救う活動に貢献したこの赤い羽根募金、現代でも、盲導犬の育成や車いすの購入に役立てられている。