「スポーツの秋」である。そして、この季節を象徴するのが10月第2月曜日の「体育の日」。祝日法に「スポーツに親しみ、健康な心身をつちかう」という趣旨を掲げるこの国民の祝日、現行の日取りになったのは2000(平成12)年の「ハッピーマンデー制度」適用以降のこと。それまでは、制定された1966(昭和41)年からずっと、「体育の日」といえば10月10日だったのである。
では、なぜ10月10日なのか。それは、「体育の日」が64(昭和39)年に開催された東京オリンピックの開会式の日を記念した祝日だったからである。
もちろんこの東京オリンピックは、夏季大会。ちなみに、2004年のアテネ大会は8月13日から29日の開催、08年の北京大会は8月8日から24日の開催予定である。こう考えると、10月10日から24日までの15日間で行われた東京大会は、異例の日程ということになる。
なぜか。日本人にはよくわかる。8月は台風が次々と日本列島を襲う。9月はご存じの「秋霖(しゅうりん)」、つまり秋の長雨の季節。アジア初のオリンピック開催を念願とした東京大会関係者は、何としても開会式だけでも晴れ渡った空の下でやりたかったのだろう。そこで浮上してきた日程が「10月10日」なのだ。
では、「10月10日」とは何か。それは、その当時の気象観測データの中で、東京地方が「晴れ」となる確率が最も高い「特異日」だったのである。
盆踊りが三波春夫の「東京五輪音頭」で盛り上がり、日本列島津々浦々に聖火リレーがかけめぐる中、東京では首都高速道路も出来上がり、新幹線は「ひかり」号が疾走を始める。そして、1964(昭和39)年10月10日の東京。天気予報は「晴れときどき曇り」だったのだが、開会式のNHKラジオ生中継を担当した鈴木文弥アナウンサーの第一声は、「快晴! 日本晴れ!」であった。