陰暦10月は「神無月(かみなづき、かんなづき)」といわれる。日本全国各地の神々がこの月に出雲大社に集まるので、各地においては「神無月」となる。逆に、出雲は「神在月(かみありづき)」ということになり、陰暦10月11日から17日、出雲大社では神在祭が行われる。
さて、年に1度、出雲に集合した神々は様々な相談事をするというのだが、その中の重要議題が出雲大社の祭神、大国主命(おおくにぬしのみこと)を中心とした「縁結び」。出雲信仰の中心にあるテーマである。
そうして結ばれた善男善女はやがて婚礼へと進むわけだが、夫婦の誓いを交わす儀式のシンボルが「三三九度」の盃(さかずき)。それは、教会式で言えば、指輪の交換に当たるだろう。
「三三九」の数字的な意味合いからいえば、3も9も奇数の「陽」であり、まずめでたい。そして「三」は、天、地、人を示す数字で、めでたい。「九」は奇数=陽の数字の中で一番大きいもの、つまり最もめでたい、ということになる。
盃ごととしては、大中小の盃が三つ重ねで用意されている。現在の神前式の要領に従えば、一番上の小の盃、つまり一の盃で新郎がまず「御神酒(おみき)」をいただく。次に同じく新婦。そして二の盃は新婦から新郎、最後の三の盃はまた新郎から新婦へ、という順で進められる。
御神酒の進め方は、盃の一つに三献。これを新郎新婦は3度で飲む。このことを三つの盃ごとに、つまり3回取り交わすので、「三三九度」の盃ということである。この風習は、江戸時代から一般的になったといわれているが、そのころの婚礼の式、つまり結婚式は自宅で行うのが当たり前。神社や結婚式場で行うようになったのは、ここ百年ほどのことである。
近年の結婚式は、ウエディングドレスで教会式、というスタイルを選ぶカップルが多くなった。また、国際結婚も2006年の人口動態統計では総結婚数の約6.1%になっている。これは1985年に比べると3.7倍強。こうなってくると、世界中の神様が、どこかで縁結びの会議をやっているのかもしれない。